クレオさんの「幸あれ!」――対面型選書サービス「クレオパトラブックス」のキセキ/クレオ

第3回:3回目も禁断?のテーマ ないものねだりに決着を!「パートナーが欲しいのにできないんですけど問題&夫婦関係上手くいかないんですけど問題」(後編)
本屋lighthouse 2026.07.31
誰でも
クレオさんの「幸あれ!」――対面型選書サービス「クレオパトラブックス」のキセキ/クレオ

クレオさんの「幸あれ!」――対面型選書サービス「クレオパトラブックス」のキセキ/クレオ

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図書委員が大人になって毎日1〜3冊読む読書ヲタクが、不動産会社の役員になり、国際不動産組織の名古屋支部長をやりながら、お休みの日に選書サービス「クレオパトラブックス」をやっています。クレオパトラブックスで起きたお客様とのやりとり(社会の縮図的出来事)や、わしクレオの人生観など雑記的に綴ります。

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さて、前編では、パートナーが欲しいのにできないんですけど問題にて、「笑顔」がどうやら鍵となって、暦年のお悩みをブチ破るかのごとくの出会って半年で入籍、というお客様のエピソードをご紹介いたしました。

そこで、彼女の「彼女らしさ」というのか、大笑いできるきっかけとなったのが、上坂あゆみ『老人ホームで死ぬほどモテたい』であったこともお伝えしたところで前編を終えました。

今回の後編では、なんと、その本が相当な波乱・修羅場?を連れてきます。

そのことを頭の片隅に置いていただきながら、これからのお話にお付き合いいただければと存じます。

※お断り これからの話は特定の方がベースにはなっておりますが、その方を傷つけることも、皆様にそれが誰なのか特定していただくことも避けたいため、類似の事例を持つ方のエピソードも合わせながら綴っていきます。それでも、これ、私のことではと思う方もいっらしゃる気もしています。あくまでもこれはワシにとって大変に教訓になったという「イタ~いエピソード」でもあり、「人には人の乳酸菌by大正製薬」 ではないですが、同じ効果を期待して同じ本をお勧めしても人によってはクスリどころか「毒」になるという対面選書の難しさを改めて痛感したという話です。どうか、心を痛める人がいませんように。よろしくお願いします。あくまでも、ワシにとってはCPBでの苦い想い出、選書家に大切なことは何なのかを教えてくれた大切な思い出です。

もとい、後編の今回もまさかの禁断のテーマ、ないものねだりに決着を!「夫婦関係上手くいかないんですけど問題」なのですが、ご存知でないかたに申し上げておくと、ワシ自身は、未婚子なし・パートナーなしの対面型選書家です(本業は不動産会社役員です)。しかし意外にも、結婚して20年近く、お子さんも大きくなってきて、手がかからないどころか、ウザがられるまでに、といった人生の大先輩(女性)のかたから相談が持ち込まれることが非常に多いのです。子育てが一段落したところで、ハッと「よくよく考えたら夫婦関係上手くいってなかったんですけど」という事実に気づいてしまうのか、ライフステージ中途者・結婚未経験者のワシに対し「ガタついている夫婦関係に、風穴を開ける、ココロの処方箋本お願いします」とおっしゃられることもまた多し。その度に、「ワシはいったい……なにを……どうしたら……」と天井の一点を見つめていたくなるような気分になっているのですが……。

猛暑で息も絶え絶えのある日、涼しい書店内の一角へお客様がやってきました。

「クレオさん、〇〇さんからの紹介で来ました。予約枠がこんなに早く埋まるとは思わなくて、久しぶりにコンサートの先行チケットとるみたいに急ぎめで(予約ページを)クリックしたんですけど、ギリギリ取れてよかったです。〇〇さんから人生観変わる本を紹介してくれるからオススメだよ、って言われてから、今日までずっとお会いしたかったです。嬉しいです」と、確かなワクワク感をもちながらも、穏やかな笑顔をたたえている女性がひとり。

なんとか、期待に応えられるように、努めて冷静にカウンセリングし、なおかつ、元気を与えられるタイミングがきたなと思ったら勢いよくプレゼンしよう。そう思いました。単純に、お客様の開口一番の素敵な言葉に、やる気スイッチを押していただいたのです。

で、いつも通り、丁寧に、なるだけココロの機敏を逃さないようにカウンセリング。カルテに丁寧に、そして端的に綴られた回答の背景、その“裏”にあるものを拾いあげていく作業に出ます。

カルテにはこう書かれていました。

「もっと自分のことを好きになりたい(セルフラブ)」

「〇〇ちゃんのママ、ではなく、ひとりの人間として認識してもらいたい」

「職場の若い子達を傷つけるような存在ではいたくない」

「いざとなった時に(子供から)相談される人でありたい」

ここで、カルテの一番最後の回答を見ると、気になるフレーズが続々と。

「夫にモテたい」

「夫婦関係がどういうものだったかわからなくなった」

「ダンナというより大きい子供をずっと育てている気分で、夫の役割をしているとは到底思えない」

最後の一文なんかは、特に、不穏な空気を纏っています。

カルテの回答「だけ」を上から見ていくと、セルフラブというケア的なものを求めるココロの柔らかい部分から、母親・職場といった社会的な役割から見る自分の立場、というところへ、そして最終的には、ひとりの女性としての純粋な「欲望」に近いような願望まで綴られていることがわかります。

で、「言いたくないことは言わんでいいんですけどが、言える範囲でどういうことなのかワシに教えてくれるかい?」といつもの深掘りをしてみると、こんな答えが返ってきました。

「昔にしてみたら、そんなに珍しいことではないんですけれども、大学卒業してすぐくらいの20代の若いうちにお互い結婚して、その時も今までもずっと共働きで子育てもしながらやってきたんですけれど、20代のうちはまだ夫に恋愛感情があるというのか……実際、恋愛結婚でしたし、少しくらいは恋愛の延長線上にあるのが、結婚なんだな~と思えるくらいには、夫に対してドキドキしたような気分でいれたような気がするんですけども、お互い30代になった頃には、自然に私は彼のお母さん代わりになっていたような気がするし、彼があきらかに夫としての役割を手放したというか、夫婦って協力してやっていくもんなんじゃないの?って疑問が出てくる頃にはバランスを崩しきっている状態で。ワンオペってこのこと?っていうような状態で。自分もちゃんと夫に指摘するタイミングを逃してきた感は否めないんですけれども……とはいえ、その反面?子育てで体力持っていかれるのに、夜の(営み)ほうは、しつこいな!ってこっちが突き飛ばしたくなるくらい毎日求めてくるし、けど、自分にはもう、子供の相手でそんな体力残ってないよ?という日々で。あ、なんか、ごめんなさい、話長くなったんですけれど、40代をとうに過ぎた今では、スキンシップよりか心に寄り添ってくれるような精神的な支えというか穏やかな愛情みたいなものがいいと思っていて。けれど、彼にはスキンシップが唯一の彼なりの愛情表現と思っているのか、そういうことを今でもしたがるんですけど、いや、そうじゃなくて!っていう。アイドルを推すみたいな感覚でいいから、肉体関係なしの愛情表現でもって夫から、もう一度モテたいんです!!」

とのこと。

ワシは今、脳内にある記憶(会話)をここに再現しましたが、改めて文字起こしすると、いかに切実で、どれだけ熱量があって、お客様にとっては「大問題」であるかが伺えます。

確か、その間もワシは「ふへ~」「ほや、お嬢さん大変だったねぇ」「あれま」「しんどかっただねぇ」「よう、ここまで生きてこれました、素晴らしい」と相槌を打ちながらも、頭の片隅で本棚の中に佇んでいるアドバイザー(著者)の召喚を試みています。

続けてお客様は言います。

「隣の芝生は青いっていうじゃないですか、そんなのわかってるんですよ。この歳になって何を言っているんだろうって。今のままでも十分幸せであるはずなのに、いいかげん、ないものねだりだ、ってわかっているのにぃいい!!」(前回と今回のタイトルは、このお客様の発言から拝借しております)

気づけば、真夏の書店内の一角で、お客様が大号泣しているではありませんか。

思わずワシは慌てて立ち上がり、

「(書店)スタッフさん~~~!!! ティッシュちょうだぁああぅい!」

と、ブース外にいる書店員さんに、ティッシュBOXを要求。

それでもお客様の涙は止まらず、あと20分でCPB終わるけれど、この1箱で足りるかなぁ?とこちらが心配になるほど、その後も泣かれていました。

ちょっと落ち着いていただきたいのもあり、かといって個人的な意見はできないし、そもそも控えたいこともあって、「泣いているお嬢さんをここに置いていくのは、ちょっと申し訳なくなるのですが、ワシは今から、本棚の海の中に消えます。アドバイザー(著者)たちを連れてきますから、その間、ちょっとお茶でも飲んで、落ち着いてくださいませね~だいじょうぶよ~あなたは、ようやりました、リラックスよ~」と言いながら、本棚へダッシュ。

あれもこれも、オススメしたい。そうだ、この人(エッセイスト)の本の中盤で言ってた、あの一言が今現在のお嬢さんにうまいこと、ココロに作用してくれるかもしれない。人生の先輩たちが発する、実務的なアドバイスも必要。けれど、頑なになっていた心をほぐすようなユーモアのある、いわゆるぶっ飛んだ本も欲しいな。

しかも、あれだ、お嬢さん、ミステリーとか小説とか、あと社会派な本も読むっておっしゃってたから、普段読まなさそうな短歌の本! そうだ、短歌が良さそう!!

そう思い、万年パートナーができないと悩んでいたお客様がその本を読んでツボにハマり、その先にスピード婚に至った(例のアレ)、ワシの中では「縁起物的一冊」となっていた『老人ホームで死ぬほどモテたい』を手に取り、意気揚々と、これまた駆け足でCPBブースに戻りました。

ゼェゼェと息を切らしながら、ワシが戻った頃には、随分とお客様は落ち着いていらしたようなので、ホッとしながらも、CPB終了まで持ち時間が10分を切っていたので、駆け足で選書した(ワシの中では厳選に厳選を重ねた)「ココロの処方箋本」10冊のオススメポイントを解説!と思っていた矢先、10冊のタワーの一番上に置いてあった本を見て、お客様が絶句しているのがわかりました。

明らかに、その場の空気が張り詰めたものに変わったのです。

そこで、「何かワシはアカンことをしたのだろうか?」

と言葉には出さぬものの、違和感を抱えたままでプレゼンを始めました。

「お嬢さん、お待たせいたしました。よく読まれるものが小説やミステリー、社会派やドキュメンタリーものといった、ところどころに緊張感があるものを日頃から好むと聞いていましたもんで、しょっぱなからではありますが、ワシ、クレオとしましては、変化球の~こちらっ!上坂あゆみ先生の……」と言ったそばからひと際、大きな声が重なってきました。

「私って、そんなにモテないタイプの人間ですか?」

「クレオさん、私は、もう、老人ホームでしかモテないって、そう言いたいんですか?」

「夫にモテたいってのは、諦めた方がいい、って、クレオさん、そう言いたくて、この本を選ばれたんですよね?」

すっかり涙が引き切ったお客様から、矢継ぎ早に言葉が飛んできます。

ここからが、ワシにとって地獄のような10分の始まりでした。

(当時は地獄に感じましたが、もちろん、このお客様には、今も教訓になっているような大切なことを教えていただきました。感謝しています)

タイトルは、ふざけたタイトルしてますけどが、中身を読んでもらえたらきっとわかる、このユーモア! たーんと笑って始める読書体験はいかがでしょう!

最後までこの短歌集の世界観に浸ってみたらば、なんだ、笑えるじゃん!という元気な自分にまた出会えるかもです!

色々と手を変え品を変え、「タイトルじゃなくて、中のページをちゃんと読んでほしい」という趣旨の言葉をワシなりにお伝えし続けたものの、言葉を尽くすほどにお客様の顔が完全に色をなくしている状態に。

この時のことを振り返るだけで、背中に滝のような汗が流れてくるような想いです。

(これを書いている今も、クーラーがよくかかっている部屋でタイピングしているにもかかわらず、変な汗を感じています)

その後、残りの本のプレゼンもやりとげ、仏頂面のお客様を前にCPB終了。

やり切ったのか? どうなんだ? やっぱりダメだったのか? と思いながらも、滝汗が止まりませんでした。

今回のこの後編に関しては、「夫婦関係上手くいかないんですけど問題」に対する、ヒントや解決に役立つ鍵のようなものは皆様に提示できていません。

なぜなら!これは!それ以前の問題だったからです!(ドヤ顔のクレオ)

そもそもの話ですが、今回のケースに関しては対面選書家であるワシが全面的に請け負うような相談事ではなく、プロのカウンセラーに真っ当なアドバイスや場合によっては治療方法を提示してもらうべき案件であって、いわゆる「専門家によるアドバイスを必要とする」ケースだったのです。

お客様としては、とても切実でかつ重いテーマを持ってCPBにお越しになられて、希望の持てる回答がもらえることを期待されていたわけですが、ワシとしては気分転換でもして、心を楽にしてみようよ!という提案も含め、非常にエンタメ要素の強い本をおすすめしました。

つまりはお客様と、ワシの心持ちの間に致命的なギャップがあった。

そのギャップが生んだ、「悲劇」だったのです。

正直、今までも心の病を抱えていると思われる方がCPBにお越しになるケースはとても多いので、こちらとしては開催回数を重ねていたこともあり、慣れっこのつもりでいました。

お客様によっては、「心療内科に行って、病名(固有名詞)をつけられたら、死にたくなるような気分になる。だから、医療機関には行かないですし、これからも行かないつもりでいます」とおっしゃる方もいらっしゃいます。

ワシは過去に長く「うつ病」を患っていた経験があるため、お客様がおっしゃることもわからなくはないと個人的には思っています。(ワシ自身の経験はまた、この先の「幸あれ!」でお話できればと思っています。自分にとっては対面選書家になるきっかけの一つでもある大切な経験です)

特定の病名が自分のアイデンティティになる。辛いですよね。

なんとなしにわかります。

たとえば「自分は統合失調症である」と認識した瞬間、俗世間を見る自分の目も変わるでしょう。または、自分は心を病んでしまったのだ、という事実を医療機関という第三者に突きつけられた気分になり、ショックに感じるのも当然のことと思います。

ただ、今回のお客様のケースは、明らかに彼女自身が手に負える範疇の相談事ではなく、またワシにとってもCPBの内容で責任を負いきれるものではなかったわけです。もちろんワシも人間なので、真剣な悩み事を持ち込まれれば、ワシなりの真剣さで返して差し上げたくなります。

けれども、どこまでいってもワシはただの「対面選書家」であって、「カウンセラー」ではないわけです。

心や精神を扱う専門家でもなければ、医療機関でもない。

この場をお借りして、ワシはカウンセラーではないよ、と改めて申し上げておきたいと思います。

今回のエピソードは「同じ本をおすすめしても、万人に同じ効果を期待することは難しく、人それぞれに違うことを感じるものだ。ということを肝に銘じておけ」という対面選書家としての教訓によって話を結びたいと思いますが……。

これ、「本」を別のものに置き換えることもできる、普遍的なものかもしれんと思うところでして、「同じリンゴをみて、隣にいる人間が自分と同じことを考えていると思うな」と言い換えてみるとどうなるのか。

リンゴを見て、ワシは「これってどういう品種だっけ? ジョナゴールド? サンふじ? なんていうやつやったっけ?」と思っている横で、隣にいる人間は「これ、いつ食べれるんだろう? 誰からの差し入れかな?」と思っているかもしれない。

他人がどう思っているかはわからない。強要するようなことでもなく、また、期待するようなことでもない。

とすると、「なんだか、夫婦って、大変なのねぇ」「他人同士が暮らすことって偉業なのかもね」なーんて思っている今日この頃です。

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〜今回のココロの処方箋〜

毎度恒例『今回の一冊』ですが、上坂あゆみさんの……(泣)

前編と同じです。おすすめ本に違いないのですが、自分にとって辛みのあるエピソードをご披露したために、泣きそうです、いや、泣いています。お許しください。(泣)

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クレオ

表現者・日本で唯一の対面型選書家「クレオパトラブックス」主宰・不動産会社役員

国際不動産組織会員等肩書きが多すぎて減らしにかかりたい。毎日紙の本を触らないとストレスで息が上がってくる。ドアラとつば九郎との掛け合いが私的平和の象徴。バイリンガルですが、日本語だと主語は「わし」、岡山弁とも広島弁とも名古屋弁ともいかないクレオ語でみなさまにはお話ししています。

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*こちらの連載は「web灯台より」にて読むことも可能です。

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