新刊チェック(26/08/30-09/05)&お知らせ
ツイッターというものに関してはお客さんからのDMが来ていないかなどを確認するついでに少し見たりするくらいで、1日5分くらいの観察だと思うのだけど、今朝ゲンロンのイベントの宣伝投稿を見かけて腹が立っていろいろ考えてしまって、気がついたら朝の読書時間が終わっていました。腹立たしい!まだぷんぷんまるだからいまここで成仏させる!(リンクは貼らない、言及されて話題になることを狙ってのことだろうから)
「ツッコミ」を入れたくなる切り抜きにすることで、最終的には炎上になってもそれもまたよし、なぜなら議論が盛んにできたことの証だから、みたいなことを考えているのかもしれませんが、「差別が可能な限り生じないようにするにはどうすればいいかを考えること」と「“差別について話すこと”をメシのタネにすること」はまったく違うし、後者は明確に悪です。書店におけるヘイト本というテーマは、差別に関するどのテーマもそうであるように、複数かつ複雑なパラメータ=変数が存在するもので、雑な土台の上で雑な議論をしていいものではありません(ようはエンタメ的に扱っていいものではなくて、それでもそのように扱いたいのなら「身内」でのみやるべきで、一般公開すべきではない)。しかもそのような「雑さ」をむしろ活用して、つまり「ツッコミ」を入れたくなるような切り抜きにして宣伝をするのは、最終的に「この発言の文脈を知らないのに(=動画見てないのに)批判できないよね」という反論をして動画視聴者=収益を増やすための誘導にもなっているということで、その点に関しても醜悪だと思います。文脈が大事なものならその文脈は適切に提示しておくべきだから。
差別について真剣に考えてその思考を実践している書店というものは、「“差別について話すこと”をメシのタネにする」にならないように気をつけたり、日々の書店運営において差別被害が生じないようにしたり、とにかくたくさん考えることがあって、結果としてそういう厳格な運営方針をとっている(ように見られる)ことで得られるのは「少数の信頼」です。これはとても大事な信頼だし、後悔などまったくしていない。だけど、厳格さだとかめんどくささだとかを人類は嫌がるので、どうしたって「多数派」になることはできない。つまり、お店の収入は多くはならない。そういう現実のなかで、じゃあどうやって「差別が可能な限り生じないようにする」と「お店の運営=存続」を両立させていくかについて、多くの書店が日々真剣に、時に己の実存すら懸けて取り組んでいる、取り組まざるを得ない状況がある。そういうことを、かれらは知らない。そして私は知ってほしいとも思わない。知られたところで、自分の言論=メシのタネにされるだけだろうから。
SNSでウケること、たくさんのアテンションが得られること、本がたくさん売れること、そういったことが「評価」や「正当性」の担保になってしまう世界に、「私」の居場所などなくてよい。よいものであることや正しいものであることが、必ずしも「売れ」や「バズ」と結びついているわけではないことを、「人文知」を掲げる者であるならば、理解できてほしいんですが。SNSと人文知、あるいは本というものとの相性、そもそも悪いですよね。本当に大事にしたいなら離れるか、SNSの使い方を「SNS流」にしないことですね。
新刊チェック(26/08/30-09/05に刊行予定の本) *入荷は少し遅れます
岩波書店 イングランド田園風景の文化史
9784000617680
“「イングランドのナショナル・アイデンティティは田園風景にある」という観念は、いかにして創造されたのか。ジェイン・オースティンからカズオ・イシグロまで、二世紀にわたるイギリス小説を、同時代の政治・経済・社会・絵画史を背景に読み解き、跡づける。著者のライフワークである文化研究の精華”。だいたいの人には馴染みのないテーマだと思いますが、私にとっては非常に馴染みが深い、正確には馴染みだけは深い代物でして、というのも著者が私の指導教官で、ゼミの先生で、当時もずっとこのテーマについて授業とかでやっていたから!あれから10年以上が経ちました。きっと当時よりは理解できるでしょう……これはおれのための本、おれの店では誰にも買わせねえ!(買ってください)
光村教育図書 あたまに キノコが はえちゃった!
9784895721820
“ある朝、頭にキノコが生えた。その正体は心配ごと。よく寝て心配がなくなればとれると医者は言うけれど……。友だちの助けを借りて、隠して、とって……食べた! 心配な気持ちと明るく付き合うヒントをくれるユーモア絵本”。一目惚れですわ、こんなん。
東京創元社 プラハの墓地 文庫
9784488070946
“知の巨人エーコが描く憎しみと差別のメカニズムは現代社会を鏡のように映し出している”とあるように、単行本が出た2016年当時にオーウェルで修論を書いていた私は読みたいリストに入れてそのまま……今度こそ読まねばなりません。
世界思想社 音楽でケアする
9784790718161
“自分の世界にたたずむ人々、かかわり方に悩むケアラー。すれ違う現場で、みながセッションに巻き込まれ、ケアする人も救われる。ズレとつながりが交錯する地点から、ケアとしての音楽療法を問う”。映画『急に具合が悪くなる』を観てよかったな〜となった人は気になるはずの1冊。ソースは私。
夜学 ただし、うつ病ではある。―日常の精神療法―
9784911830017
“著者の幼少期の体験、仕事との関わり、家族との生活、診察室でのやり取りがありありと描かれる。そこに精神科医としての知識が重なり、うつ病を病気としてだけでなく、人が生きてきた時間や価値観、生活の中で起こる出来事として捉え直していく”。金剛出版での別の連載を読んでもらえればわかると思うのですが、この人の書くものはとてもよいのです……。予約受付中。
扶桑社 虚弱と歩く
9784594103736
“過眠、不眠、肩こり、倦怠感、頭痛、手足のしびれ、胃腸の弱さ、クローン病、若年性高血圧、自家中毒、めまい、生理痛、胸やけ、胃もたれ、腰痛、膝の痛み、悪夢、アルビノ、自閉スペクトラム、うつ、微熱、嘔吐、漫然と続く不調――。13名の書き手が、それぞれの虚弱について書き下ろしました”。絶対に終電を逃さない女『虚弱に生きる』(扶桑社)が起点の1冊であることは間違いないでしょうけど、ひとりではなく複数の書き手の話が読める展開になっていくのはよきことのように思えます。予約受付中。
東洋経済新報社 教養としての盆栽
9784492048283
これは久禮さんが好きそうだな、どうやって展開するか、棚に落とし込むか、気になるな〜、と見た瞬間に思いました。フラヌール書店、オススメです。人文書が好きな人はぜひ(ウェブストアは比較的軽めの本が並んでいるけど、そうしている理由もきっとこのインタビューを読むとわかります)。という、本の話(の冒頭)から横滑りした他店舗の紹介でした。でも盆栽は気になるから仕入れます。
みすず書房 インテンションズ
9784622097044
“有名なフレーズ「人生は芸術を模倣する」の出典でもある四篇から成る古典的名著の新訳”。なんと……これまた私の英文学生時代の提出しなかった宿題みたいな本が……いまなら読める気がする!と意気込んで撃沈する最高の読書体験がおれを待っている……。
法政大学出版局 首都
9784588490439
“舞台は英国離脱や排外主義に揺れる2016年の欧州委員会。アウシュヴィッツを柱とした設立50周年記念祭を企てる官僚たち、ヨーロッパの新首都建設を思い描く老教授、ブリュッセル市内に突然現れ疾走する豚。ホロコーストの記憶を継承し、永遠の平和を夢見る壮大な物語”。気になりすぎる小説だ……。帯の太文字「豚、EU、アウシュヴィッツ」が醸し出す空気感もすごい。ゼーバルト『アウステルリッツ』(白水社)がとてもよかったので、その流れで読んでみたいかもしれない。
サンマーク出版 経験の絶滅
9784763143242
書誌情報がまだなんだけど、原書のアマゾンページをさらっと(しかし翻訳には苦労しつつ)(なぜならおれは自動翻訳を使いたくない)(けど英語の勉強から逃げていた英文学生だったからだ!)確認すると、結構いい感じな気がします。たぶん『スローメディア』(世界思想社)とかと共通するなにかがあるのでは……。とにかく「SNSに侵食された生活」から脱却しましょう、ということなのでしょうね。
今週のお知らせコーナー
今年は8月17日(月)〜21日(金)の5日間を夏休みとします。19日(水)は神奈川県大船のポルベニールブックストアに13時頃から閉店まで滞在、本屋lighthouse出版部の本を売ったりどうでもよい話をしたりしています。大船におけるポルベニールの最後の日々、1日だけお邪魔します。
①定期読書会&イベント関連のお知らせ
・8月30日(日)14時〜16時 高橋くん読書会
→今回の課題テーマは毎夏恒例の「夏休みの読書感想文」。書いて提出、書こうと思って間に合わなかった、書くつもりなど一切ない!(しかしみんなのは読みたい)、などなど動機は不問。特に申し込みは不要です。自由参加。ツイキャスでも流します。zoom参加希望者はbooks.lighthouse@gmail.comまで連絡ください。
・9月21日(月・祝)12時〜14時 「文学作品をわからないわからない言いながら読む会」
→今回の課題本はペ・スア『遠きにありて、ウルは遅れるだろう』(白水社)。詳細と申込はこちらから。
・2026年9月20日(日)14時~19時 刷る刷るクラブ(主催:FROM THE HELL MAGAZINE/ayano)。定期開催になりました。シルクスクリーンでええ感じのデザインを印刷しようぜ〜、というイベント。予約は不要、参加費と印刷したいもの(Tシャツとかトートバッグとか)を持ってきてください。あと世界平和の気持ちね。詳細はこちらから。
②〈特別イベント関連〉
・〈映画上映会〉6月28日(日)映画『医の倫理と戦争』上映会は無事終了。好評だったので近いうちにまたやります。会場は店内奥の部屋。会費は無料です。詳細はこちらにて。
・2026年9月5日(土)13時〜15時 岸波龍『四坪の本屋はなにを考えているのか』(書肆imasu)刊行記念イベント 「幕張と本郷の本屋はなにを話そうとしているのか」、開催します。詳細と申込はこちら。
・〈店頭フェア開催中〉「Write down your voice.」という日記プロジェクトを始めました。この世界を生き抜くための日記。そしてこの世界を変えるための日記。それを私たちの「声」で作っていくプロジェクト。店頭に設置した共有の日記帳に「あなたの日記」を書き込んでいく試み。気軽にそして真剣に、ご参加ください。詳細はこちら。
③読書のSNS&記録アプリ「Reads」のアカウントも取得、運用しています。個人的に読んでいる本を中心に紹介、ただただ楽しくやっております。ウェブストアでは「最近Readsで紹介した本」カテゴリも作りました。見るだけならウェブブラウザでもできるので、ぜひチェックしてみてください→本屋lighthouseのページ
④ウェブストアを移転しました。新ストアはこちらです。旧ストアは完全に停止しています。TシャツなどのグッズはSUZURIで販売中です。
⑤ブルースカイのアカウントを開設していました。なお、Twitterの運用はほぼ終了しました。緊急連絡やDM利用などは続けます。あと、Twitterでしか告知ができない/していないアカウントに関わる告知なども、当面の間は続けます。通常のお知らせ系はほかSNSにて同時並行的におこないますので、ご都合よろしいものでチェックしてください。各種リンクはこちらにまとまっていますので、よーちぇけらー٩( ᐛ )و
⑥2024年5月より営業時間を変更しました。土日祝日はこれまでどおり12時〜19時での営業ですが、平日の営業時間を14時〜21時に変更。いままでより2時間後ろにずらします。会社帰りにも寄りやすくなると思うので、ぜひ帰り道に……。
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