クレオさんの「幸あれ!」――対面型選書サービス「クレオパトラブックス」のキセキ/クレオ

第1回:初めましてのご挨拶(にしては長い) クレオパトラブックスはこうして生まれた
本屋lighthouse 2026.04.03
誰でも
クレオさんの「幸あれ!」――対面型選書サービス「クレオパトラブックス」のキセキ/クレオ

クレオさんの「幸あれ!」――対面型選書サービス「クレオパトラブックス」のキセキ/クレオ

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図書委員が大人になって毎日1〜3冊読む読書ヲタクが、不動産会社の役員になり、国際不動産組織の名古屋支部長をやりながら、お休みの日に選書サービス「クレオパトラブックス」をやっています。クレオパトラブックスで起きたお客様とのやりとり(社会の縮図的出来事)や、わしクレオの人生観など雑記的に綴ります。

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本屋lighthouseのメルマガをご登録の皆様、はじめまして、こんにちは、こんばんは。

既に本屋lighthouseにてお会いしたことのある方は、ご無沙汰をしております。

対面型選書サービス「クレオパトラブックス」主宰クレオと申します。

今年からこのメルマガにてゆるゆると文章を書く機会を店主関口殿が与えてくださいましたので始めます。

まず、クレオパトラブックスって何よ、という話ですが、自称日本で唯一の対面型選書サービスでして、簡単にいうと、“その人に合ったおすすめの本をその人がワシの目の前にいる状態で書店の本棚から選ぶ”というものです。

ワシ自身は名古屋にある不動産会社2社の役員をしておりますので、自分で言うのもなんですが忙しない毎日を過ごしているため、休みが捻出でき次第クレオパトラブックスをやる、という具合です。(ではクレオパトラブックスは副業ですね、とよく言われますが、持ち前の(?)経営手腕が全く活かされず、税理士が首をもげるほど傾げてしまうような、大赤字です。)

しかも唐突に休みができそうだという瞬間に書店さんに「緊急開催ダァ」と連絡をするせいで、告知も直前、開催日程も間近ということでエンドユーザーにはハプニング的なものと未だに認識されています。

今年で6年目に突入したクレオパトラブックス。

慣れたお客様やインスタのフォロワーの方だと、「ハプニング上等!」とばかりに楽しんでくださっている様子まであります。ありがたいことです。

ちなみにワシが「対面」選書にこだわっているのには理由があります。

皆様想像してください、今日冷凍庫にパピコがあったとします。

晩御飯の後に食べようと思って買ったパピコ。しかし意外と晩御飯がずっしりとお腹に来てしまって、アイスは別腹!とはならなかった。で、翌日。

おやつの時間に「あぁ、昨日食べれんかったパピコあるや」と思い出したとしましょう。その瞬間、CMで突如目についたチョコモナカジャンボ。舌が一気にチョコモナカジャンボになってしまい、すぐそばにあるパピコはいつでも食べれるからいいやと置いておいて、コンビニへダッシュ。なんなら帰り道でチョコモナカジャンボを食べ切ってしまうも、パピコが再度発見されたのは半年後。

人間、こんなふうに気まぐれで、場当たり的で、わりと欲望に従って素直に生きている。

そういう動物だとワシは思っていて、だから先ほどの例は、アイス、を本に置き換えていただくとすなわち「積読(つんどく)」のメカニズムな訳です。

ちなみに世にある選書サービスというのは、カルテ(問診票)やアンケートをお客様に書いていただくかメールでやり取りをして、予算組みがあり(一万円選書がスタンダード)、アンケートを元に店主や書店員さんが選んでダンボールでお届けするのに約1ヶ月。という具合のものが多いわけです。

しかし先ほど申し上げたように、人間気まぐれなもので今日食べたいアイスと明日食べたいアイスが違うように、今日読みたい本と明日読みたい本が違うことがよくあるのです。ともなると、ワシの場合はせっかちな人柄も相まって、選書にかかる「1ヶ月」という期間が非常に耐えられないわけです。

人間1ヶ月もあれば“生まれ変わっている心地”まであるぞ!(?)と思うわけなのです。

1ヶ月前に選書アンケートに書いた自分の気持ちがまるっきり変わっていて、ダンボールでやっと届いた頃には、「せっかくお金払ったけれども、どれも読む気持ちになんだかならんのだわな〜」となっていても当然と思うわけです。

だもんで、まず、主宰のワシが“タイムラグのある選書”に耐えられない。

ならば、ワシがこの世にないことをやればいいのだ!と。

リアルタイムで、その人の顔を見ながら、漢方薬局のように舌を診ながら(舌診)、ワシとの何気ない会話の中でその瞬間のココロ模様を丁寧に拾い上げて“即時”選書して差し上げるサービスをやろう!と思った次第です。もちろんワシなりにカルテは用意しておりますが、カルテ記入から選書(MAX10冊めど)までを45分で駆け抜けていくため、カルテの設問は5つしかありません。そして、本当に本棚まで“駆けていく”ような瞬間が多々あるために終了後は毎度息が上がっています。

〜急な思いつきではありますが、クレオパトラブックスに初めてお越しになる方へいつも申し上げている「CPBのご説明」を再現してみようと思います。〜

お嬢さん(殿方)、初めまして、クレオです〜。クレオパトラブックスに、ようお越しになられました。初めての選書でしょうから、クレオパトラブックス何やるの〜てね説明させていただきますよ。クレオパトラブックスは日本で唯一の対面型選書でして、こうしてお嬢さんとお隣同士座ってですね、カルテ書いてもらいながら、お嬢さんの人生の話をかいつまんで聞かせていただきながらワシがここ(書店)の本棚の中からお嬢さんに今このタイミングで読んでほしいものや、これからの人生の“転ばぬ先の杖”になりそうな本を選んでいきますね〜。

ほいでクレオパトラブックス、わしも黒髪ぱっつんで、名前にエジプト的な要素がありますからエジプトっぽくピラミッドの3点掛けで(本を)選んでいきますよ〜(手で三角を作るクレオ)

①ワシが読み切れた本(じゃないと本当に人におすすめできんですね〜)

②人生のタメになるか、エンタメ性の強い本(せっかくお金出しても面白くないといかんね〜)

③あなたのこれからの人生に寄り添ってくれるであろう本

この3点でもって選ぶわけですけどが、ワシ自身過去にえらいしんどい時期がありましてね、そのとき本しか読めんかったんですけれど、体も動かんくて精神もおかしくて何もできんかった自分を生きながらえるように助けてくれたんが本だったもんで、ワシは本をただの「本」と思ってなくて、これは“ココロの処方箋”と思ったんですね〜だで、クレオパトラブックス的にはお嬢さんに「ココロの処方箋本、お出しします」という気持ちでやらさせてもらいますねぇ。

といった具合です。(再現が終わり我にかえるクレオをご想像くださいませ)

が!「ワシ自身が本に救われた人生だったので他人にも本をおすすめして同じように助かる命は助かってほしい」というのは完全にオモテ向きの理由です。

書いていても非常に善人ムーヴだなと思うわけですが、実はクレオパトラブックスをやろうと思ったのは別の理由があり、それが本音だったりします。

ここからは、クレオパトラブックス誕生に至る、本当にあった出来事をお話しします。

名古屋の新刊書店TOUTEN BOOKSTOREが開業して数ヶ月が経った頃、いつものように本を爆買いして(30〜40冊)、会計を済ませているところ、背後から突然「あのぅ、いつも本爆買いされるかたですか〜?」とお嬢さんからお声がけが。

「お嬢さん、間違ってないです。クレオと申します。毎度こんな具合に(ダンボールを見せる)爆買いしています、よろしくお願いします。」

すると「え〜!本当にいつもこんな量を買ってかれるんですか〜!すごーい!えっ、あの、おすすめの本とか私が読んだらいい本とかってあったりしますか〜とかって急に言って大丈夫ですかね……」とおっしゃったので、現在のクレオパトラブックスのカルテの原型になるような質問を口頭で投げかけていきました。たかだか2つか3つ質問したくらいだったと思います。

お嬢さんからの回答を聞くなり、急に自分の中で何か「偶然とはいえ、お嬢さんからもらった人生の時間を無駄にしたくない」というようなスイッチが入り、真顔で書棚に向き合い始め、ポカーンとするお嬢さんを横目に体感1分で3冊を書棚から抜き取り、お嬢さんに手渡して差し上げました。

「きっと、お嬢さんを助けてくれるはず。この3つ(冊)があれば、きっと。お嬢さんは絶対大丈夫です。」

すると、明らかにお嬢さんの膝の力が抜けていき、その場にしゃがみこんでしまいました。「おぅ、お嬢さん大丈夫かね?!」と声をかけると、しゃがみ込んだまま頷いています。よく見ると目に涙が。

えぇぇぇぇ!初対面のお嬢さんの心を抉(えぐ)るようなことしてしまったんかもしれん!女の子を泣かせたんと違うか?!とオロオロしていると、お嬢さんがようやく立ち上がって一言。

「これ、こういうの、この活動、続けてください!こういうの、待っている人が私の他にも絶対いるはずなんです、お金とってもいいので続けてください〜!!」と。

“続ける”も何も、こちらはこんなことをやったのは初めてでしたから、今度はワシがポカーンとしました。一体、今、ワシがお嬢さんにして差し上げたのは、どういう活動なんだ?と。

よくよく聞いてみると、このお嬢さんは、青年海外協力隊に入ることが決まり、この日の翌日にセントレア(中部国際空港)を出発して発展途上国に3年赴任するとのことで、海外滞在経験は学生時代のオーストラリアホームステイ一週間のみ。英語にも不安があり、さらには渡航自体にもブランクがあり、一回赴任すると次回の日本帰国は3年後。現地の食事も自分に合うか、慣れるのかもわからない。つまり、不安でしかない心理状態のまま、日本最後の日(前夜)にいくことを決めたのが「本屋」だったというのです。

それで、自分で選んだ本を数冊持って、飛行機内で読み進めて不安を緩和させたかった、ということらしかったのです。が、ある意味気合い十分で本屋に着いたはいいが、久しぶりの本屋すぎて何を手に取ったらいいのかわからない。

不安を取り除く準備をするための本屋で“不安”になってきたぞ、おかしいな。

あっ!インスタストーリーで見たことある本爆買いの人がおる!あの人に聞いてみよう!

そんな気持ちだったろうと推察します。

ワシはその時お嬢さんの職業や、これまでの経歴等何もお伺いはしませんでしたが、お嬢さん曰く「クレオさんが手渡してくださったものが、どうしてこんなに自分のことがわかるんだろうって不思議を通り越してびっくりして、気がついたら泣けてきた」とのこと。

そしてすぐにお嬢さんは3冊全てを会計カウンターへ持っていって、振り返ってワシに対して満面の笑みで「これ明日持って、行ってきます。頑張ります。」とおっしゃってくださいました。

ワシは、明日すぐ来る不安を目の前にしているにもかかわらず満面の笑みを向けてくださったことと、「お金とってもいいので、続けてください!」という熱量を帯びたあの言葉たちが数日間ずっと脳内にこびりついて、忘れることができませんでした。

忘れたくても、言葉がこだましてくるんです。

そういえば、“人間、飛躍する前にはグッとしゃがみ込む瞬間が必ずある”っていうけれども、彼女はそうだったんだろうなぁ、と。実際、彼女は書店の床に“しゃがみ込んじゃった”もんね、じきに絶対飛躍しますね、ふふふ、なんて思ったりもしたのですが、反面、ちょっと待てよ……と咄嗟に過去の自分の人生を振り返り、

(飛躍する前のしゃがみ込みだ、大丈夫、この状況をなんとか耐えるんだ……耐え抜いたら自分はやっと心が軽くなって浮上できるんだ!だから頑張れワシ!と思った瞬間に大のオトナが寄ってたかってしゃがみ込んでいる自分の背中を押さえつけて、床に叩きつけ、マジで死ぬ方向へ持っていかれそうになったことあったじゃん……!)

とハッと気がつきました。(大変だぁあああ!)

ということは、もしかしたら過去のワシみたいな人がこの世の中にゴロゴロいるのかもしれん。残りわずかの、やっとの元気を奪ってくる大人を前に息も絶え絶えの人。明日自分が生きられるかわかんねぇなと思っている人。浮上?もういっそのこと消えられたら楽なんだけど、という人。

ワシは、過去の自分みたいなんを、ほっといていいんだろうか。

ワシだけ救われとって、見ず知らずの人は死んでもいいってか。

この世にはもしかしたら、お嬢さんが笑顔になってくれたかの如く、ワシが本を手渡すだけで生きる方を選ぶ人がおるかもしれん。

「お嬢さん、わし、ただの読書ヲタクだけど、知らない人に本をオススメする活動、やってみます!」

ということで、クレオパトラブックスを始めたのが本当のところです。

本屋で突然声をかけてくださったお嬢さんに出会わなければ、初対面の人に本を選ぶ体験がなければ、そしてお嬢さんが泣いてくれなかったらば、今のクレオパトラブックスはなかった、というわけです。以来、その方とはお会いしていませんが、今でも感謝してます。(どっかで届いているといいな、ありがとうね)

と結局、善人ぶったような理由に帰結してしまっているようですが、当のわしクレオは、「人間ようわからんなぁ〜」とか「泣いて喜んでくださってよかったなぁ〜」とか「あんまりピンときてないような表情されたけれどもワシどうしたらよかったんだろ」と七転八倒しながらも、真摯におひとりおひとりに向き合いながらココロの処方箋をお出ししています。以後、クレオパトラブックスでのエピソードや個人的に身につまされるような話や世の中の人たちを勝手に代弁したような気分になってたらクレオパトラブックス中に泣きたくなった話(!!)など、ワシ個人としての考えやワシの人生のよもやまばなしをしながら、またワシから勝手にバーチャル選書1冊をご紹介してゆきますので、お時間許す限り、お付き合いくださいませね。どうぞよろしくお願い申し上げます。

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〜今回のココロの処方箋〜

CPB誕生のきっかけをくださったお嬢さんに「今」手渡したい一冊。

ほら、異国の地でも人間笑いながらなんとかやっていけるもんでしょ?と答え合わせしたい気分です。

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【と!ここで、ワシ、本屋lighthouseの店主関口殿より、ノンバイナリーのかたにも対応できるような呼称、たとえば「おぬうさん」があったほうがよいのではというご提案をいただきまして、“大賛成!”と思いましたので、なんでか申し上げますね。タイムリーにInstagramのリール動画「おぬうさん案件」なるものが流れてきたからです!

確か、リール作成主が目の前でスマホを落とした人に「落としてますよ!」と声がけしたかったが、ボーイッシュな服装の長髪の方で女性か男性かわからず、リール主いわく“性別の判別不能”で、「お姉さん、スマホ落としてますよ」と言うか、「お兄さん、落としてますよ」と声がけするのかどっちで声をかけたらいいか、わからない。そこで、「おねえさん」と「おにいさん」の中間である「おぬうさん」という非常に攻めたサウンドでの声がけに挑戦したところ、目の前のかたが振り返って、スマホを手渡し、結果オーライだったとのこと。それで、このリールが流れてきたというエピソードは偶然の産物かもしれないけども、こういう可能な限り全方向への対応を目指す在り方は取り入れていきたいので、今後のCPBでは呼称についての確認を初めにしようと思います。具体的には、CPBのご説明時に「お嬢さん/殿方/おぬうさん/そのほか使ってほしい呼称のどれがいいかを訊く」という過程を盛り込みます。(名前+“ちゃん”呼びをリクエストしてくださるお客様もいらして、ワシは楽しいです!)よろしくお願いします!】

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クレオ

表現者・日本で唯一の対面型選書家「クレオパトラブックス」主宰・不動産会社役員

国際不動産組織会員等肩書きが多すぎて減らしにかかりたい。毎日紙の本を触らないとストレスで息が上がってくる。ドアラとつば九郎との掛け合いが私的平和の象徴。バイリンガルですが、日本語だと主語は「わし」、岡山弁とも広島弁とも名古屋弁ともいかないクレオ語でみなさまにはお話ししています。

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*こちらの連載は「web灯台より」にて読むことも可能です。

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