忘れていくものの記録260202〜15

読書日記
本屋lighthouse 2026.02.17
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2月2日(月)

 爆睡してたらひろこさんが早起きに成功していた。暴力的な角度の太陽とともに起床。インスタに政治的であることを緩和しつつも政治的なことを直球で示す、投稿をひとつ。社会は家電。定期メンテナンスが大事。休日出勤の気分。キャッチボールをして、走って実家まで行って車を回収、ひろこさんも回収してイケア。切れた電球を買ったり、お店の模様替えのイメージを固めたり(固まらず)してイオンモール。ウィンドウショッピングのはずがお互いにアウターをゲットしていた。冬のQOLを上げましょう。

As we drew nearer the land, I hailed with delight the appearance of innumerable sea-fowl. Screaming and whirling in spiral tracks, they would accompany the vessel, and at times alight on our yards and stays.

陸地にさらに近づいていくと数え切れないほどの海鳥たちが現れて、おれはよろこびに溢れた。海鳥たちは鳴き、渦を巻いてぐるぐると回りながら大型船についていって、帆桁と支索の上に舞い降りた。

 高校時代の友人から、当時にもらった手紙が出てきたこと、その頃のことを鮮明に思い出したこと、大事な人にはいまのうちに手紙を書こうと思ったこと、といった内容のLINEが送られてきて、うれしいのと同時に悲しくなってしまった。世界がおかしくなっていること、終わりの感覚を抱いてしまっているのかもしれないこと、それらは(友人に対する、あるいは世界に対しての)杞憂かもしれないが、少なくとも私はそう感じてしまっているということの、明白な証のような気がした。

2月3日(火)

 早起きに半分成功。日記をニュースレターに投稿してタイピー。

That piratical-looking fellow, appropriately named the man-of-war’s-hawk, with his blood-red bill and raven plumage, would come sweeping round us in gradually diminishing circles, till you could distinctly mark the strange flashings of his eye; and then, as if satisfied with his observation, would sail up into the air and disappear from the view.

そのまるで海賊のような、鮮血のような赤い嘴と漆黒の羽毛を持ち「軍用鷹」と相応しくも名づけられたやつらは、その奇妙な光を宿した眼に視線を合わせて警告を発するまで、おれたちの周辺に一気にやってきて、その陣形を徐々に崩しながらも取り囲んでいた。それから、まるで観察を終えて満足したかのように空中に舞い上がり、視界の彼方へと去っていく。

 なんとなく「いまだな」と感じて阿部公彦『善意と悪意の英文学史』(東京大学出版会)を読み始める。志津勤務を終えてそのまま中井の伊野尾書店へ。落合駅から歩くことにして、思ったよりも早く辿り着き、思ったよりも、というより記憶のなかの伊野尾書店より明確に小さいお店を見つける。お店のサイズは変わっていないので、私が大きくなったのだろう。ちょうど伊野尾さんはいなくて、店内を(もうどうやっても外せない眼鏡となってしまった)同業者の目線で物色していると、配達帰りらしい伊野尾さんが戻ってくる。事務的な連絡事項をスタッフに伝えているので挨拶はせずに待っていたら、客注品の本が破れた状態で入荷したため返品の手続きをしないとならない状況になり、そのうちどうもこれから来客があるらしく、こういうドタバタしているときにされる挨拶は面倒ということを知っている同業者の私は、吉岡乾『ゲは言語学のゲ』(講談社)を買って退店。どうも私はいま「言葉の使い方」に意識があるらしい。

 『善意と悪意の英文学史』は「社交」に関する本とも言えて、そりの合わない人もいる環境のなかでどのように振る舞うか、そして言葉を発するか、さらには自分の内側にある「善意」を他者にどう伝えるか、というテーマと響きあう。私が店内を同業者の目で彷徨いているのを伊野尾さんは気がついていて(数年ぶりだが何度か会っているし、マリーンズの試合を観に行ったこともある)、こいつはどうして話しかけてこないのだと思っていたかもしれない。つまり私の善意は届いていなかった可能性もある。

 そのまま帰るのももったいないので中井駅前をふらつき、初めて伊野尾書店に来たときに伊野尾さんと入った気がする喫茶店を見つけて、本を読んでいる。喫煙可能なため、店員は灰皿を持ってきた。私は非喫煙者なので「いらないです」と答えた。ならばどうして喫煙可の、しかも煙がモクモクしている奥のほうに?と店員は思ったかもしれない。私は単に伊野尾さんと入ったかもしれないお店の雰囲気を味わいたかっただけなのだけど、そして伊野尾さんは喫煙者だったのか、違うような気がしてきて、きっとあのときこの店には入っていないのではないか、と思い、そろそろ閉店となるらしき店内のジトっとした空気を感じている。

 ひろこさんが手巻き寿司を機械のように巻いては食べ続けていて、おそろしかった。

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